Lesson2-4 植物と人間

植物は、なぜこんなにも複雑な精油をつくり出すのでしょうか。アロマ&ケアを楽しむ前に、精油がどのようにつくられ、植物にとってどのような存在なのか考えてみましょう。

植物と精油

私たち人間は生きるために野菜や肉を食べます。しかし、それができない植物は、生きていくために必要な栄養素を自分自身でつくる必要があります。そのために、植物は光のエネルギーを使い、空気中の二酸化炭素を吸収し、根から得た水やミネラルから、必要な栄養素(糖質・タンパク質・脂質)をつくり、酸素を放出します。

この過程を「光合成」といい、これらのつくり出された栄養素を「一次代謝産物」といいます。次に、その一次代謝産物を使い、「二次代謝産物」である「芳香成分」をつくり出します。これが、のちの精油です。この芳香成分は、植物内の油胞という小さな袋の中に蓄えられ、特殊な分泌腺でつくられています。

動けない植物は、虫の嫌いな芳香成分を出して虫を遠ざけ身を守ったり、逆に虫の好きな芳香成分を出して虫を近寄せ受粉に役立てたりしているのです。

光のエネルギー → 光合成 → 栄養素をつくる(一次代謝産物:糖質・タンパク質・脂質)→                   植物自身を守るためのもの(二次代謝産物:芳香成分=精油)→命をつなぐ 

植物にとっての精油(芳香成分)のはたらき

  1. 誘引作用 (虫の好きな芳香成分を出し、虫を引き寄せ、受粉に役立てたり種子を遠くへ運んでもらったりして子孫を増やす)
  2. 忌避作用 (虫の嫌がる芳香成分を出し、虫を避け、身を守る)
  3. 抗菌作用 (有害な菌から身を守る)
  4. 抗真菌作用 (有害なカビから身を守る)
  5. 冷却作用 (汗のように芳香成分を出し、蒸発させ、冷却することで太陽の熱から身を守る)
  6. 情報伝達 (ホルモンのように芳香成分を出し、植物内で情報伝達している)
  7. 老廃物 (不要なものとして排出している)

 

人間と精油

精油は本来、植物が自分を守るためにつくり出したものですが、人間に対してはどのようにはたらくのでしょうか?

人間に対しては、①心理作用(心に対するはたらき)②薬理作用(からだの不調を予防・改善する)③生体リズム調整作用(食欲、睡眠などのリズムを整える)の3つの作用があります。その中で現在、注目されているのが「薬理作用」です。

精油は、数多くの有機化合物できており、その一部には薬と同じようなはたらきがあります。ただし、そのはたらきが、身体に良い影響を与えるときもあれば、使用方法を誤ると身体に悪い影響を与えるときもあります。安全に精油を使うためにも代表的な薬理作用を確認しましょう。

精油の薬理作用

心身へ

作用 意味
鎮静作用 神経系を鎮める、気持ちを落ち着かせる、リラックスさせる
鎮痛作用 痛みを和らげる、緩和する
鎮痙作用 筋肉の緊張をゆるめ、筋肉の痙攣を鎮める
抗炎症作用 炎症を抑える
抗うつ作用 うつ的な気分を緩和する
食欲増進作用 胃腸の消化活動を高め、食欲を増進させる
催淫作用 性的な欲求を高める
駆風作用 消化器官を鎮静させ、ガスの排出を促す
頭脳明晰作用 思考を活発にする
解毒作用 排泄物や不純物の排出を助ける
利尿作用 尿の生産と流出を促進する
通経作用 *妊娠中、授乳中は使用を避ける、または医師に相談する 月経を誘発、促進する
陶酔作用 幸福で満足した状態にする
去痰作用 痰の排出を助ける
催眠作用 眠りを誘う
免疫賦活作用/免疫促進作用 免疫のはたらきを強め、活性化する
緩下作用 腸のはたらきを促進する、排便を促す
脂肪分解作用 脂肪の分解を助ける
粘液溶解作用 粘液を溶かす
駆虫作用 ノミ、シラミなどの寄生虫を防止、駆除する
引赤作用/加温作用 血液量を増大し、局所を温める
刺激作用 身体機能のはたらきを速める
発汗作用 汗を促す
強壮作用/トニック作用 全身にはたらきかけ、機能を活性化、強化する
子宮強壮作用 子宮を強化する
鎮咳作用 咳を鎮める
消臭作用/デオドラント作用 においを薄くする、除去する
ホルモン調整作用 ホルモンバランスを調節する

 

虫、細菌、ウィルスへ

作用 意味 
殺菌作用 バクテリアなど細菌を殺す
抗菌作用 細菌の増殖を抑える
抗ウィルス作用 ウィルスの増殖を抑える
抗真菌作用 真菌(カビ)の増殖を抑える
忌避作用/虫除け作用 蚊など虫を除ける

 

皮膚へ

作用 意味
収れん作用/アストリンゼント作用 皮膚・組織を引き締める
保湿作用/モイスチャー作用 皮膚に潤いを与え、乾燥を防ぐ
エモリエント作用 皮膚を柔らかくする

 

人間に害を与える可能性がある作用

作用 意味
光毒性 紫外線にあたることで、皮膚に炎症を起こす(注意!柑橘系の精油)
感作性/アレルギー *低濃度で使用する、敏感肌の人は使用を避ける 免疫による反応のこと
皮膚刺激 *低濃度で使用する、敏感肌の人は使用を避ける 皮膚や刺激し、かゆみなど炎症を起こす
粘膜刺激 口腔、鼻腔、消化器などの粘膜に対して刺激を与える
神経毒性 娠中、授乳中、てんかんの症状がある場合は使用を避ける、または低濃度で使用する 神経組織にダメージを与える
肝臓毒性 *低濃度、短時間で使用する 肝臓にダメージを与える

 

Lesson2-4 まとめ

・精油は、植物の光合成からできる「二次代謝物」である

・植物が、虫の好きな芳香成分を出し、虫を引き寄せる作用を「誘引作用」という

・植物が、虫の嫌がる芳香成分を出し、虫を避ける作用を「忌避作用」という

・「鎮静作用」とは、神経系を鎮める、気持ちを落ち着かせるはたらきである

・細菌の増殖を抑える作用を「抗菌作用」といい、カビの増殖を抑える作用を「抗真菌作用」という

・「感作性」とは免疫による反応のことである

・「皮膚刺激」とは皮膚や刺激し、かゆみなど炎症を起こすことである

・神経組織にダメージを与えることを「神経毒性」という