「ラベンダーの香りで心が落ち着く」「オレンジの香りは元気が出る」など私たちが何かしら感じるのはそれなりの理由があるからです。その理由を知るヒントになるのが、精油の化学です。ここからは、精油の化学について学びましょう。

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精油は天然の化学物質
私たちの身の回りにあるものは、すべて化学物質からできています。私たち人間も、骨をつくる「カルシウム」、筋肉になる「タンパク質」、血液のもととなる「鉄分」などが集まって成り立っています。
では、精油はどうでしょうか?
精油は、炭素、水素、酸素など天然の化学物質の集まり、つまり有機化合物です。しかも、非常に複雑な形をして成り立っています。また、これらの化学物質は、天然であるがゆえ、すべてが解明できているわけではありません。
しかし、化学物質の並び方や組み合わさり方などから精油をいくつかのグループに分けることができます。さらに、どのグループの成分がどのくらい含まれるかによって、その精油の香りや作用を知ることができます。

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(「Physical properties:物理的特性」「Furfural:フルフラール(芳香族アルデヒドの一種)」)
精油成分のグループと特徴
植物を人間でたとえるなら、花が「顔」で、成分は「性格」のようなものです。精油の成分は、目で見ることができませんが、香りとして感じたり、身体に何らかの変化を与えたりします。精油の成分を確認してみましょう。

1、テルペン系炭化水素類→さらにグループ分けできます
*名称の語尾が○○エンで終わる
1-1 モノテルペン炭化水素類
代表的な成分 リモネン(柑橘系)、α―ピネン(サイプレス、ジュニパー)など
主な特徴
- 柑橘系やウッディーな精油に多く含まれ、ほとんどの精油に含まれている
- 低温でも酸化しやすいため、熱や光を避けて保管する
- 優れた抗菌作用、抗ウィルス作用、抗炎症作用、鎮痛作用、血行促進作用など
1-2 セスキテルペン炭化水素類
代表的な成分 カマズレン(カモミール・ジャーマン)、β―カリオフィレン(イランイラン、ブラックペッパー)、パチュレン(パチュリ)など
主な特徴
- 香りが強いため、低濃度で使用する
- 揮発性が低い
- 優れた抗炎症作用、抗アレルギー作用、鎮静作用、鎮痛作用など
2、アルコール類→さらにグループ分けできます
*名称の語尾が○○オールで終わる
2-1 モノテルペンアルコール類
代表的な成分 ゲラ二オール(ローズ、ゼラニウム)、リナロール(ラベンダー、ネロリ)、テルピネン-4-オール(ティートリー)、メントール(ペパーミント)など
主な特徴
- 比較的、皮膚に対して刺激が少ない
- 優れた抗菌作用、抗真菌作用、抗ウィルス作用、免疫賦活作用など
2-2 セスキテルペンアルコール類
代表的な成分 サンタロール(サンダルウッド)、ネロリドール(ネロリ)、パチュロール(パチュリ)など
主な特徴
- 特定の植物にだけある成分
- 抗炎症作用、強壮作用、抗アレルギー作用など
3、フェノール類
*名称の語尾がオールで終わる
代表的な成分 オイゲノール(クローブ)、チモール(タイム)など
主な特徴
- 強い香り
- 酸性で刺激が強いため、低濃度で使用する
- 皮膚刺激
- 肝毒性
- 優れた抗菌作用、抗真菌作用、抗ウィルス作用、免疫賦活作用、強壮作用など
4、アルデヒド類
*名称の語尾が○○アールで終わる
代表的な成分 シトラール(レモン、レモングラス)、シトロネラール(レモングラス)など
主な特徴
- 強い香り
- 酸化しやすい
- 皮膚刺激
- 肝毒性
- 感作性
- 鎮静作用、抗炎症作用、抗真菌作用、忌避作用など
5、ケトン類
*名称の語尾が○○オンで終わるなど
代表的な成分 カンファー(ローズマリー)、メントン(ペパーミント)、ヌートカトン(グレープフルーツ)、ツヨン(セージ)など
主な特徴
- 神経毒性(乳幼児、妊娠中、授乳中、てんかんの症状がある方は使用を避ける、または低濃度で使用する)
- 肝毒性
- 優れた粘液溶解作用、鎮痛作用、鎮静作用、脂肪溶解作用、去痰作用など
6、エステル類
*名称が○酸○○となる
代表的な成分 酢酸ベンジル(イランイラン、ジャスミン)、酢酸リナリル(ベルガモット、ラベンダー)など
主な特徴
- 甘くて優しい香り
- 比較的、皮膚に対して刺激が少ない
- 鎮痛作用、鎮静作用、抗炎症作用、抗菌作用、抗ウィルス作用、抗真菌作用など
7、ラクトン類
*名称が一定ではない
代表的な成分 ベルガプテン(ベルガモット)、ジャスモン(ジャスミン)など
主な特徴
- 圧搾法で抽出される柑橘系の精油や一部のアブソリュートに少量含まれる
- 光毒性
8、オキサイド(オキシド)類
*名称の語尾が○○オールまたは○○オキサイドで終わる
代表的な成分 1,8シネオール(ユーカリ、ローズマリー)、ローズオキサイド(ゼラニウム、ローズ)など
主な特徴
- ツーンとした香りで刺激が強いため、低濃度で使用する
- 風邪、花粉症の予防、呼吸器系の不調によく利用される
- 感作性
- 肝毒性
- 去痰作用、粘液溶解作用、抗ウィルス作用、抗菌作用など
リラクセーションになる!?ラベンダーの精油の成分

ラベンダーの精油には、酢酸リナリル40%前後、リナロールが30%前後、その他何百もの成分が含まれています。そのうち酢酸リナリルには、強い鎮静作用があり、私たちがラベンダーの香りを嗅ぐと、リラクセーションに役立つというわけです。このような精油成分によって起こる身体の変化を「薬理作用」といいます。
Lesson2-2 まとめ
・精油は、「有機化合物」である
・「モノテルペン炭化水素類のリモネン」は、柑橘系の精油に多い成分である
・「リナロール」と「テルピネン-4-オール」は、アルコール類である
・「モノテルペンアルコール類のゲラニオール」は、ローズやゼラニウムの精油に含まれる成分である
・「アルデヒド類」と「フェノール類」には皮膚刺激がある
・「ケトン類」の神経毒性があるため、乳幼児、妊娠中、授乳中、てんかんの症状がある方は注意が必要である
・「ラクトン類のベルガプテン」という成分には、光毒性がある
・「オキサイド類の1.8シネオール」は、去痰作用や粘液溶解作用がある