Lesson1-2 現代

現代

19世紀になると、植物から有効成分を取り出し薬にしたり、芳香成分から人工的な香料を作り出したり、香りの文化は科学とともに発展していきます。では、アロマと関わる現代の代表的な人物をみていきましょう。

フランス 軍医 ジャン・バルネ(1920~1995年)

フランス人の化学者ルネ・モーリス・ガットフォセに影響を受けた「ジャン・バルネ」は、精油の抗菌作用に興味を持ちました。彼は、軍医として従軍し、戦争の負傷者たちに精油を消毒のように使い治療を行なうようになります。(これは、医薬品不足を補うために行われたことです。)

このような経験や成果をもとに、精油の効果を研究、1964年「ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法」を出版します。フランスでは、彼の影響を受け精油が薬として発展していきます。フランスでは医師による処方のもと精油を内服することもあり、フランスのアロマ&ケアは医療行為として認められ、健康保険も適用されています。

オーストリア 生物学者 マグリット・モーリー(1895年~1968年)

オーストリア出身の生物学者「マグリット・モーリー」は、精油を植物油に薄めてトリートメントするという新しい技術を生み出した人物です。彼女は、身体と心のバランスを整えることを目的としたホリスティックアロマを研究し、その人の症状や性格に合わせたトリートメントを実践していきます。

そして、その研究結果をまとめ、1961年「最も大切なもの~若さ」を出版、1962年美容の国際的な賞「シデスコ賞」を受賞します。

その後、この本は英訳され、自然を愛するイギリス人たちに受け入れられていきます。さらに、彼女の研究や成果をもとに、多くのアロマセラピストがトリートメントを実践、美容やリラクゼーションに役立てようとしていきます。

ホリスティックとは・・・

日本語では「全体的」と訳されますが、ここでいう全体的とは「いくつかのものがつながり、影響し合っている」という意味があります。たとえば、「健康」をホリスティックという視点から考えると、「身体と心のバランスが整っている状態」となります。

一方、「病気」をホリスティックという視点で考えると、「身体と心のバランスが乱れた状態」がなります。このように身体に起こるトラブルに対して、その部分の問題だけをみるのではなく、その人が本来持つ自然治癒力、心や精神、家族、社会など全体を見てアプローチしようとする考え方です。

この「ホリスティック」の考えに基づいてアロマ&ケアは行なわれます。

イギリス アロマの研究者 ローバート・ティスランド

ルネ・モーリス・ガットフォセやジャン・バルネの書籍をもとに研究を重ね、アロマの普及に力を注いでいる人物が「ロバート・ティスランド」です。1960年代からはアロマスクールを開校し、多くのセラピストを育てています。

また、古典的な植物療法、歴史、精油の使い方などアロマを学問としてまとめ、1977年「芳香療法=理論と実際」を出版します。その後、この本は世界で10カ国語に翻訳され、世界中にアロマが広がります。彼は、現在、イギリスのホリスティックアロマ界でリーダー的存在です。

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さらに日本へ

さて、日本でアロマと聞くと、一般的に「サロンや旅先で行なうアロマトリートメント」をイメージするのではないでしょうか・・・・。これは、日本にイギリス式のホリスティックアロマが広まったからです。きっかけは、1980年代日本に入ってきた、イギリス・ローバート・ティスランドの「芳香療法=理論と実際」です。この本が、日本のアロマ&ケアの導入につながり、さらに日本でも学術的研究が進んでいます。

Lesson1-2 まとめ

・ジャン・バルネは精油の治療効果を研究し、1964年「ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法」を出版した

・ジャン・バルネの影響を受け、フランスのアロマは「医療」として発展している

・マグリット・モーリーは、ホリスティックアロマを研究し「最も大切なもの~若さ」を出版した

・精油を植物油に薄めてアロマトリートメントするという新しい技術を生み出した人物は「マグリット・モーリー」である

・イギリスのアロマは、マグリット・モーリーの「ホリスティックアロマ」が大きく影響している

・アロマ&ケアは「ホリスティック」の考えて基づいて行なわれている

・イギリスのローバート・ティスランドはアロマを学問としてまとめ「芳香療法=理論と実際」を出版した

・イギリス式のホリスティックアロマが日本に引き継がれ、日本のアロマは美容やリラクゼーションに取り入れられている