Lesson1-3 日本

イギリス・ローバート・ティスランドの「芳香療法=理論と実際」が翻訳されたことをきっかけに、日本のアロマは普及していきます

さらに、1995年に起きた阪神淡路大震災や現代のストレス社会を背景に、リラクセーションに注目が集まり、アロマがさらに発展していきます。ここからは、日本の香りの歴史を振り返りながら身近な植物をみていきましょう。

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日本の香りの源

どんな宗教でも、香りは欠かせないものです。それは香りを焚くという行為に、心を清めるという意味があるからです。私たち日本人は、仏壇に手を合わせるとき、花を供え、お線香を焚きますが、これもそういった意味があるのです。

では、仏教や香りの文化は、どのように日本に伝わったのでしょうか。これは諸説ありますが、552年百済から日本へ、仏教とともに香りの文化も伝わったとされています

日本書紀によると「595年香木(沈香)が淡路島に流れついた。島の人たちは香木のことを知らなかったので、薪といっしょに焼いた。そのかぐわしい煙は、遠くまで漂った。珍しい特別なものとして天皇に献上した。」というような記述があります。

ここに出てくる「香木」とは、その名前の通り、香る木材のことをいいます。具体的には、沈香(じんこう)、白檀(びゃくだん)などの植物です。これらの香木は、もともと日本にはないもので、権力と知識のある上層階級のものしか知らないものでした。

平安から江戸時代の香り文化

平安時代になると、香り文化は宗教から趣味へと発展します。貴族たちは、沈香や白檀などさまざまな香料を練り合わせてつくる「薫物(たきもの)」を楽しみ、着物に香りをつけたり、部屋に香りを漂わせたりと、香りの世界を広げていきます。その様子は、枕草子や源氏物語にも頻繁に描かれています。

やがて、戦国時代。武士たちは、兜に香りを焚き込めて戦いにのぞんだともいわれています。その後、室町時代末期になると公家や武士たちの間で沈香を焚いて香りを鑑賞したり、香りの種類を当てる遊びをしたりする「香道」が確立していきます。香道には、香りを、味わうための作法があり日本独特の文化です。

さて、今まで裕福な人たちだけが楽しんでいた香り文化は、江戸時代になると庶民へと浸透していきます。そのきっかけは、中国から技法が伝わったお線香です。お線香は、庶民の間でも広く使われるようになり、日常生活で香りを楽しむようになっていくのです。

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日本の植物と香り 

私たち日本人は、古くから香りを生活に取り入れてきました。知らず知らずにのうちに、私たちはアロマ&ケアに触れているのです。では、身近な植物に目を向けてみましょう。

・ウメ (中国が原産ともいわれ、万葉集にはウメの歌が数多く登場します)

・サンショウ (癖のある香りが特徴、ピリッと辛みのある和食に欠かせない香辛料)

・シソ (紫色の赤ジソは梅干しに、緑色の青ジソ(大葉)は薬味に使います)

・カリン (甘い香りがする果実、お酒や砂糖漬けにします)

・クズ (クズの根を乾燥させたものを風邪薬として使います)

・ミツマタ (春の初めに開花、枝が三つまた状に出ます。古くから和紙の原料となり、現在でも紙幣の原料となっています)

・タチバナ (白い花と高貴な香りが特徴、文化勲章のデザインにも採用されています)

日常的にアロマを楽しむ日本人

日本人には、日常的にアロマを意識するような風習があります。それは、植物を使ったお風呂です。1年の中で最も日照時間の短い12月の冬至に、「邪気を払う」「健康になる」「風邪予防になる」という言い伝えのもと、「ゆず湯」に入ります。

また、5月の端午の節句にも「菖蒲湯」に入ります。菖蒲には、殺菌作用があり、葉を揉むと強いレモンのような香りがします。

みかん湯でアロマ&ケア

注意事項を守り、手軽にできるアロマ&ケアを体験してみましょう!

用意するもの

・みかんの皮(15個くらい)
・ガーゼの袋またはだしやお茶のパック

作り方

食べた後のみかんの皮を日影の風通しの良い場所に置き、干しておきます。それをガーゼ袋にいれて、お風呂のお湯に浮かべます。

注意事項

①アレルギーに注意しましょう。
②肌にかゆみ出たり、ピリピリしたりするときは入浴をやめましょう。
③みかんの皮は、1回使用したら捨てましょう。

Lesson1-3 まとめ

香り文化は「仏教伝来」ともに日本に伝わった

・「香木」とは、沈香や白檀などの植物のことである

・「薫物」とは、沈香や白檀などさまざまな香料を練り合わせたものである

・日本には、香りを楽しむための「香道」という独特の文化がある

・12月冬至の「ゆず湯」、5月端午の節句の「菖蒲湯」など、日本人は日常的にアロマを取り入れている