Lesson4-1 香りがたどる4つのルート

精油の香りはどのように私たちの身体に届くのでしょうか?ここからは香りがたどるルートを探ります。 

ルート1、皮膚から

精油→皮膚→血管・リンパ管→筋肉・関節→血液循環→内臓→代謝→息、汗、尿、便として排泄

トリートメントオイルが皮膚に塗布されると、精油成分は簡単に皮膚の奥へと浸透していきます。これは精油成分が非常に小さく、親油性(油に馴染みやすい性質)があるためです。身体の表面には、バリアのような役割を果たす皮脂があります。その皮脂にもまた親油性があり、精油が皮膚に馴染むというわけです。

さて、その後、精油成分は毛細血管やリンパ管に入り、数時間から数日かけ、血液にのって全身へ運ばれ、肝臓で分解、腎臓でろ過され、最後に汗や息、尿や便となって排出されます。

ルート2、呼吸器から

精油→鼻・気管支→肺・肺胞→血液循環→内臓→代謝→息、汗、尿、便として排泄

芳香浴や吸入法などによって、空気中に拡散した精油成分を吸い込むと、鼻や気管支を通り、肺へはたらきかけます。その後、精油成分は肺の粘膜から血管に入り、血液にのって全身に運ばれ、肝臓で分解、腎臓でろ過され、最後に汗や息、尿や便となって排出されます。

呼吸器からのルートは、精油の摂取量が微量のため、安全性が高いものです。

ルート3、消化器から(一般の方はできません

精油→口→胃・腸などの消化器粘膜→内臓→血液循環→代謝→息、汗、尿、便として排泄

一般の方は、精油を飲めません。しかし、他の国や一部の医師の間では、精油を薬のように服用することがあります。精油を飲むと精油成分は、口、のど、食道、胃などの消化器の粘膜から吸収され、血液にのって全身へ運ばれます。

このルートは、皮膚、呼吸器、嗅覚からのルートと比べると精油の摂取量が多く、身体に影響を及ぼす可能性があり危険です。

ルート4、嗅覚から

精油→鼻腔→嗅上皮(鼻上皮)→嗅細胞→嗅球(鼻球)→脳・大脳辺縁系へ

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芳香浴などによって香りを嗅ぐと、芳香成分が鼻腔(鼻の穴:空気を清浄、加温、加湿する部位です)を通り、嗅上皮(鼻上皮)につきます。そのあと、嗅上皮の粘膜に溶け込んだ芳香成分は、嗅細胞を刺激します。さらに嗅細胞では、香りの情報を電気信号へ変えて嗅球に伝わり、脳へとたどりつきます。

嗅覚は疲れやすい?!においの順応

「病院の消毒のにおい」「友達の家の香り」などはじめて訪れた場所で感じる特有のにおい。しかし、しばらくするとその香りを感じなくなり、鼻が慣れてしまいます。これは、なぜでしょうか?

香りがなくなったわけではありません。これは、私たちの嗅覚が疲れて(慣れて)、その香りを見分けることができなくなったからです。これを「順応」といいます。精油も同じです。

たとえば、ラベンダーの精油をしばらく使っていると、ラベンダーであると識別しなくなり、順応します。そのようなときは、他の香りを嗅ぐか、しばらくその場所から離れてみましょう。再びラベンダーの精油を使うと、香りを感じることができます。

また、芳香浴中も、窓を開けるなど適度な換気を忘れずに行いましょう。 

嗅覚には個人差がある

嗅覚は、個人差が大きく、性差や体調によっても感じ方が変化します。一般的に、嗅覚は男性より女性の方が敏感です。特に、女性は月経時や妊娠時に敏感になります。

また嗅覚は加齢とともに低下します。さらに、嗅覚は判別性が悪く、香りを覚えるのは難しい作業です。精油の香りを覚えたいという方は、その香りのイメージを大切にして、言葉や色で表現すると良いかもしれません。

Lesson4-1 まとめ

・精油成分は、「非常に小さく親油性」があるため、皮膚へ浸透する

・精油を飲む行為は、精油の摂取量が多く、身体に影響を及ぼす可能性があり一般的にはできない

・香りを嗅ぐと、精油成分は鼻腔を抜け、嗅上皮の粘膜に溶け込み、嗅細胞と嗅球を通ったあと、脳へ伝わる

・香りに慣れてしまうことを「順応」という

・嗅覚は、個人差や体調によって感じ方が変化する

・嗅覚は、男性より女性の方が敏感である

・嗅覚は、加齢とともに低下し、判別性が悪い感覚である